2024年夏からEIL高校生交換留学南アフリカ派遣プログラムに参加している小野真心さん。今回、ご自身の留学体験を多くの方と共有したいと、レポートを書いてくれました。
今回は、ケープタウンの気候やタウンシップ(スラム街)、10月あったご自身の誕生日について書いてくれました。第2回のレポートは前編・後編に分けて公開しており、今回は後編をお届けいたします。ぜひお楽しみください!
タウンシップ
ケープタウンにはタウンシップ(Township)というスラム街が複数箇所点在しています。タウンシップとは、南アフリカの1948年に確立されたアパルトヘイト政策(白人と非白人を分離する人種隔離政策)時代に黒人専用として指定された居住区のことで、アパルトヘイトが撤廃された1994年以降、今でも南アフリカ国内でかなりの人々(白人とは生活圏が隔離され、労働賃金や教育への予算配分も白人と有色人種で格差を付けられ、未だに貧困から抜け出せない)が留まり、そこで暮らさざるを得ない状況が続いています。
先日移動中の車の中からそのうちの1ヵ所である何キロにも渡って広がるタウンシップを生まれて初めてリアルに目にしました。非常に衝撃を受けました。雰囲気としてはテレビ番組で見たフィリピンのゴミ捨て場に暮らすスラム街に近いような気がしました。長いトタンや木の切れ端、鉄板、ブロック、それこそゴミを繋ぎ合わせただけの到底家とは呼べない塊が連なった光景が、まるで現実ではない映画のように私の目には映りました。アルコール依存症や薬物中毒者と思われる汚れた格好をした大人の群れの中には、小さい子どももたくさんいて、学校には通っているのか、何を食べているのか、トイレはあるのか?と、本当にどう生計を立てているのか、私の頭は混乱して考えが追い付きませんでした。興味本位だとしても思い付きで立ち入ったり、写真を撮っていい場所では決してないことは直感で分かりました。
その後、現地の受け入れ団体が催しているタウンシップを訪問するツアーに他のイタリア、ドイツなどからの留学生と8人で参加してきました。居住者の方に伝統衣装を着せてもらい、現地の料理作りを体験させていただき一緒に食事をしました。ここはタウンシップといっても前に目にしたような場所ではなく、私たちのような外国人や外部ボランティアを受け入れることで収入を得て、結果としてタウンシップを知ってもらい発展させたいと考える人々が集う比較的安全な場所です。それでも私は本音では衛生的に自分は居住するには抵抗があり、暖かい歓迎をしていただいたにも関わらず、その時はもう二度と訪れることはないだろうと思ってしまいました。(これから気持ちが変わるかも知れません)。プール付きの豪邸、メイド付きの優雅な生活をしている人々の道路1本隔てたところにある、タウンシップに住む人々の生活の理不尽さ、不合理さを考えると自分一人ではどうしようもなく、またどんどんと思考が混乱してしまいます。ですが、南アフリカに来たからには見て見ぬふりは出来ない避けることのできない国が抱えた問題に触れた実体験なので、自分なりにこの現実を日本に帰ったら友だちに知ってもらいたいと思っています。
散髪
先日は髪の毛が伸びてきて、洗ってから乾かすのも面倒になり自分で揃える限界が来たので美容室へ行きました。日本で野球部でしたが髪型は自由だったため、まさか南アフリカで坊主になるとは思っていませんでしたが、勉強への取り組みがたるんでいるような気もしていた時期なので、気合いを入れるための坊主頭でもあります。南アフリカはHIV感染者がとても多いため、美容室もきちんとしたところへ行かないと(タウンシップには路上の散髪屋さんもあります)刃物を介しての感染もあると注意を受けていたためかなり緊張しました。
誕生日
10月には私の誕生日がありました。ちょうど日曜日だったのでホストマザーが朝からレストランに連れ出してくれて、夜にもサプライズケーキと共にお祝いしてもらい、南アフリカで17歳を迎えました。薄々気が付いてはいて内心期待している私でしたが、実際に花火の付いた大きな綿菓子が運ばれてきてホストやお店の人全員がネイティブのバースデーソングを大合唱してくれた時は本当に嬉しかったです。翌日は友達がお菓子などたくさんプレゼントしてくれました。一生忘れないであろう誕生日になりました。
その他
ケープタウンは人口約460万人の南アフリカでも2番目の大都市であり観光地ですが、日本人永住者の割合は少なく、概ね0.004パーセント前後を推移しており約200人弱ほどと言われています。日本企業の進出もあまりありません。駐在や長期留学生も他のメジャーな世界の都市と比べてもかなり少なく、今出会っている人たちは私が初めて出会う日本人、あるいは一生で出会うたった1人の日本人の場合が多いのです。交換留学生の役割は第一に世界平和に繋がるための文化交流です。大袈裟かもしれませんが、私を通して日本の印象が決められてしまう責任も負っています。初めて口にしたものがたまたま口に合わずお腹を壊したとしたら二度と進んで食べようとは思わないのと同じで、初めて接する日本人が仮に差別的、あるいは暴力的であったりその国の文化を否定するような人間であれば、たとえとてもフレンドリーな人たちでも日本は…日本人は…と友好な関係をそれ以降築いてくれなくなることも十分あり得ると私は思うのです。もちろん無駄にいい人間を演じることには無理がありますし、私の今の語学力では議論はおろか誰かを説得したり交渉することは不可能です。今の自分にできることは周囲の意見に分かったふりをして流されないこと、孤立を恐れてダメだと思うことややりたくないことには誘われてもはっきりNO!と言うこと、少しでも日本の場合はこうだよ、と文化の違いを伝えて、日本に興味を持ってもらい、出来ることなら「日本が好き、行ってみたい!」と思ってもらえたらいいなと願っています。帰国後たくさんの人に南アフリカの文化を伝えられるように、残り8ヵ月で更に大勢の人と交流し彼らの文化を吸収したいです。
前編をまだ読まれていない方はこちらからご覧ください。
(写真、文:2024年南アフリカ派遣生 小野真心)
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