2023年8月よりEIL高校生交換留学フィンランド派遣プログラムに参加していた加藤あかねさん。
留学中はExperimentersの連載もしていただきました!今回、ご自身の留学体験を振り返ってレポートを書いてくれました。ぜひお楽しみください!
2023年8月29日に日本からフィンランドに出発しました。フィンランドの長期滞在に必要なビザが出発予定前に発行されず、予定より23日遅れた出発でした。出発を待つ間ホストマザーにビデオ通話でフィンランド語の文法などを教えてもらいました。
私が留学したフィンランドのオウルは北部の人口約21万人の都市です。滞在した家はオウル川と森の近くで自然に囲まれていました。毎日森の道をバス停まで歩いたり、森を散歩したりしました。森の空気や自然の音がたくさん感じられて平和で落ち着きます。雪国ならではの美しい銀世界と寒さ、短い夏の植物の生命力と美しい水、神秘的なオーロラなど1年で大きく変化する自然の中で生きる力を感じることができます。
学校は8月上旬に始まるため、到着した翌日から登校しました。私が通った高校kastellin lukioは大きな学校で、普通高校とスポーツ高校があり、施設が充実しています。フィンランドの高校では、自分の将来の方向性により科目を選びます。日本にある教科以外に心理学、哲学、宗教も学べます。私は心理学に興味があり4つのコースを取りました。勉強していくうちにさらに興味を持ち、日本に帰国して心理学の本を借りて読んでいます。1年は5学期に分かれていて、1学期には最高で8科目選択可能で、たいてい5~7科目とるので空きコマができ、友達と過ごしたり宿題をしたりします。また、学年制ではないので様々な年齢の子と授業を受けます。部活はありませんが、私の学校には選択授業の中で科学の大会に参加するチームや休み時間に活動するクラブなどがあり、私は手芸クラブに参加し、編み物や折り紙をやりました。寒い冬に毛糸のマフラーや手袋、帽子は必須で、冬に向け編み物をする人が多いです。私も家で編み物を教えてもらい楽しくなって帽子やミトンなど編み始めました。面白くてリラックスできる趣味で、近隣の人と編み物の話で盛り上がったこともあります。また、フィンランドの高校では1人1台パソコンが配られて教科書を見たり、日々の宿題や提出課題をやります。パソコンの操作、特に数学の計算ソフトの使い方に戸惑いました。デジタル教科書は簡単にマーカーやメモを書いたり、教科書内検索で探しやすい反面、目が疲れたり、気も散りやすく、紙に書く方が覚えやすい面もあります。先生にメールを送ったり、自分の時間割もパソコン上で見えるのは便利で、自分で管理する力がつくと思いました。
初めの頃はフィンランド語を何も話せず、ほぼ理解もできない状況で、教科書やノートを日本語に訳してやっと授業の内容を理解する感じでした。でも言語は国の文化や習慣を表していて、言語を学ぶことは国を理解するために大切だと思ったので、授業をよく聞いたり、家でさらに文法を教えてもらったり、フィンランド語を話したり、本や雑誌を読んだりしました。3か月たった頃、少し授業が分かるようになって、学校でもフィンランド語を使ってみようと先生に話しかけました。私がフィンランド語を話すと先生たちは驚き、喜んでくれて簡単に話してくれたので言語学習がさらに楽しくなりました。4か月目にホストマザーの家族に会いました。彼らは英語を少し話せるだけだったのでフィンランド語で話しました。自分の知識と想像力を総動員して話したら、想像以上に会話が成り立ち、自分のフィンランド語に自信を持つと同時に、さらに様々なことを伝えたいと思い始めました。6か月頃から翻訳機がなくても授業を理解できるようになり、さらに勉強が楽しくなりました。先生やファミリー、クラスメイトともフィンランド語で話すようにしました。やはり英語が通じるとは言ってもフィンランド人にとって英語は母国語ではなく英語に自信がない人もいるので、英語だと話しかけられないけれどフィンランド語なら話したい人もいて、フィンランド語で話すとお互いを親しく感じられました。
難しかったのは話す勇気を出すことです。もちろん私の周りはフィンランド語のネイティブで、たどたどしいフィンランド語を話す人はいません。どんどん進んでいく会話を理解できても会話には入れませんでした。話す前にどう言うか考えている間に話題は過ぎていて、また私はフィンランド語の強いrを発音できず、理解されないのでは、と怖がっていました。でも私のつたないフィンランド語を理解してほめてくれる友達や先生、ファミリーのおかげでフィンランド語を使うことができ、身振り手振りと表情、相槌を交えて伝えようとしました。
フィンランドでは英語を使える人が多く、留学してもフィンランド語を習得せず帰国することもあるのは本当だと感じました。印象的だったのは近所の人やクラスメイトがすぐ英語で話しかけてきたことです。フィンランド人が英語を話せるのは英語の使用頻度や必要性が高いからではないかと思いました。テレビではたくさん英語の番組や映画が放送されます。フィンランドでは子供向けの番組以外、海外のものは吹き替えせず字幕を付けるだけです。学校の授業でビデオを見る時もフィンランド語だけでなく、英語で説明されているものも多く見ます。日々言語を使う力が鍛えられていると感じました。
高校の交換留学は文化交流であり、両国の人にお互いの国に興味をもってもらうことだと思っています。私は日本の高校に毎月、フィンランドで体験した日常生活や行事などについて書いたものを送っていました。ある時家族が、私がフィンランドに留学に行ってから、テレビやラジオを流していても、フィンランドという言葉が聞こえるとはっとその番組に耳を傾けるようになったという話を聞き、レポートの目的はただ事実を伝えるだけではないと感じました。自分の周りの人々が、留学生の私の存在や留学中に発信する情報により、今まで生きてきて全く気にもしなかった別世界の情報を自然に取り込んだり、フィンランドや日本という国を身近に感じてもっと知りたいと思い、視野が広がることが留学生の意味だと思います。さらに、高校留学ではホームステイでそこの国の生活や文化に入り込み、現地の生徒たちと同じ高校生活を送ります。彼らがどのような価値観や考え方の中で生きているのかを知り、外からは感じられない住人しかわからない習慣や感性に気づき、過ごす中でその国の一員のように感じられました。
留学の初めから学校でも暖かく受け入れられましたが、孤独で部外者だと感じていました。だから自分から授業の時などに声をかけて自分の存在を知ってもらい、会話をするようにしていました。また、留学担当の先生が女の子を紹介してくれて、その子と一緒に過ごしていろいろ教えてもらいました。その子の友達も私を暖かく受け入れてくれて仲良くなり、友達の輪が広がりました。友達と休み時間や放課後に時間を忘れるほどたくさん話したり、時にはフィンランドと日本の選挙や学校、自然のことなどお互いの文化の違いを実感しました。
日本の生活で大切な基盤となる考え方の中には、日本だけで世界共通ではないものにも出会いました。違いは住んでいる人々の価値観や考え方に基づいていて、それぞれの国の習慣を知り、価値観を理解して受け止めることが重要だと実感しました。また、自分に根付いている文化を人に説明する難しさと面白さを感じ、自分の知識を増やしてもっと日本について伝えたいと思いました。多くの友達が日本に興味を持って質問してくれたり、一緒に日本食を作ったり、日本そして私の住んでいる岐阜について調べてくれて幸せでした。
この留学を通してかけがえのない親友に出会いました。留学前は、友達に自分のことを話せませんでしたが、フィンランドでは友達に自分から話すことも増えました。そして帰国して出発前より自分に自信が持てたと感じています。自分の思うことを人に伝えられるようになり、目指していたことを達成しました。フィンランドの友達と一緒に勉強して高校を卒業したかったですが、それはかないません。お互いが離れてもフィンランドで出会った事実はずっと私の中に残っています。このつながりを一生大切にしていきたいし、友達は国を超えた人と人のつながりであると強く感じました。いつか再開を果たすため、まず高校を卒業して自分の進む道を見定めるというモチベーションがわきました。
自分のことを理解し、新しい国で言語を勉強して高校に通った経験は、私の世界を大きく広げたと思います。留学を支えてくれた家族、高校、友達、ファミリー、岐阜県の方、すべての関わってくださった皆様、ありがとうございました。
(写真、文:2023年度フィンランド派遣生 加藤あかね)
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