EILの奨学金制度の一つ、「EIL留学生奨学金」は、派遣国において交換留学生としての活躍が期待される生徒のための奨学制度です。奨学生の皆さんには、プログラム終了後に体験談を提出いただいています。2019年度夏出発プログラムは、新型コロナウイルス感染拡大に伴い早期帰国となってしまいましたが、留学中に学んだことを体験談にまとめていただきました。
本日は、2019年度夏出発、カナダ派遣生T.F.さんの留学体験談をご紹介します!
留学への期待
英語でもっと話せるようになりたい、英語で学びたい、日本以外の国を知りたい、他の国の友達を作りたい。「こんな事がしたい」は沢山あった。簡単ではない事もわかっていたけど、常に期待の方が上回っていた。
現地研修を一緒に受ける留学生のメンバーとはすぐに仲良くなれた。カナダにいる期間を通して大変な時期を乗り越えられたのは、みんなの存在が大きかったと思う。みんなも頑張っているなと励まされたり、カナダ滞在中に誕生日を迎えた友達が誕生日会に招いてくれて、そこでまた新しい出会いがあったりなど、僕の中で留学生同士の繋がりは大きな支えになっていた。カナダの空港について直ぐはまだ多くの日本人に囲まれていたことから、そこまで気持ちに変化はなかった。カナダに来たという実感も実はそこまで湧かなかったがバスに乗り、テンポラリーファミリーが待機している学校の駐車場に入った時と、バスの中でファミリーとの対面を待ってる時は留学期間全体を通しての中でもかなり緊張した瞬間だったと思う。
テンポラリーファミリー(事務局注:研修中のホストファミリー)とのファーストコンタクトはできるだけの笑顔で!と心がけたものの、何を話していいかわからず家に向かう車内では会話は完全にmotherのペースとなった。もちろん、色々と話してくれたのはファミリーが僕に気を使ってくれての事だ。この時点でファミリーのお年寄り独特の訛りが強いことに焦りを覚えた。テンポラリーファミリーと会って家に着いた時にはすでに夜だったので荷物を片付け、家の説明を聞き、晩ご飯を簡単に食べたらあっという間に寝る時間になった。
現地研修では他の留学生のホストハウスもバスで数十分もしない範囲にあり、僕の場合は研修中通う学校がバス停で3つ4つほどの近距離だったので通学は簡単だった。が、慣れないバスの乗り降りに、最初の数日は乗り過ごすのではないかと緊張の連続だった。公共交通機関の乗り降りや料金の支払いは、日本国内でも多少、地域などによって差があると思うのだが、見知らぬ土地、しかも海外で乗り過ごしたとなればもう全てが終わる、学校へは着けない、ファミリーの元へは戻れない、くらいの気持ちに当初なっていたのも事実だ。実際、一度は乗り過ごしたこともある。学校へ行くバスで一つ乗り過ごし戻ったのだ。研修先(Ajax)のバスラインは日本よりも随分とシンプルで、〜通り"のみ"を走る路線で、難なく戻る事が出来、ちゃんと学校へはたどり着けたのだが。
留学2日目以降は徐々に出来ることも増え楽しくなっていった。真夏だが朝の風は肌寒く、雨はスコール以外ないので基本はよく晴れていて、慣れてしまえば現地研修中のAjaxでの朝の学校への登校は留学生活の中ではトップクラスに気持ちの良いものだった。学校では団体から派遣されたネイティブの先生2人から、大まかなカナダの地理、歴史、文化(メジャースポーツなど)を学んだ。それ以外では実際に近所のスーパーやショッピングモールに出向いてカナダでの買い物にチャレンジしたりボウリング場へ行って楽しい時間を過ごした。ファミリーのjuniorさんとBernardさんはとても親切にしてくれた。昔、お孫さんが使っていたというリュックをくれたりもした。家では一緒にテレビを見たり近くの公園に散歩に行ったり教会に行ったり、他の留学生と一緒にトロントへ連れて行ってもらったりした。
キリスト教の教会に行くのは初めてで、最初は何を言っているのか全くわからなかった。恐らく使われている言葉が聖書に沿った古語だったり、アクセントのクセだったりも理由だと思う。毎週末、教会に行き半分もわからないような話を1時間半ほど聞くのは、僕にとってはなかなか大変なことだった。しかしこの国の多くの人々にとって宗教がどれだけ大切にされているのか垣間見えた瞬間でもあり、ファミリーと一緒に過ごせる大切な時間でもあり、とてもいい経験だったと思う。
現地研修を終えて
現地研修終盤はもうすぐ長期留学が始まることで不安に駆られることもあったが、約30人の日本人がいたこともあってそこまで気にしていなかった。短期研修が終わってファミリーに別れを告げ、トロントの2泊3日の研修旅行へ向かった。トロントではナイアガラの滝を見たり、海外からの留学生と一緒にランチを食べたり船上パーティーを楽しんだ。最終日、留学生がそれぞれの長期滞在先(North Bay)へ向かう日、特に仲の良かった留学生数人でお互い滞在先でベストを尽くすことを改めて約束して別れた。North Bayでホストファミリーに会う時もやはり緊張したが、年の近いホストブラザーがいることは非常に楽しみだった。
North BayはAjaxと違いかなりのんびりした郊外の街で、バスや車での移動をする機会が格段に増えた。気温は9月の時点で肌寒く、11月から帰国する直前の3月までずっと雪が降っていた。雪の量、徒歩での移動のハードさ、除雪車や雪かきなど、全てが初めての体験だった。
学校生活はというと、1学期はかなり大変だった。友達は簡単にはできない、バスケットボールクラブは志願者がみんなレベルが高く落ちてしまい他にできるスポーツがなくズルズルとクラブ参加なしを引きずってしまう、Englishの授業はついていくのがやっと、など散々だった。精神的にも「他の留学生の中にはもっと能動的に活動している人たちがたくさんいて、英語もきっと伸びている。なのに自分は上手くいかず燻っているまま」と悩んだ。ホストファミリーに相談しようにもホストファミリーが全く外出(買い物以外で)しないこともその悩みの中に含まれていたので出来なかった。しかし、日本での出発前オリエンテーションの時にOBOGの人たちが言っていた「人と自分とを比べて自信を無くしてはいけない。そもそも比べられるものじゃない」という言葉を思い出し、あくまで自分のやり方で努力するようにした。
ホストファミリーとの外出がないのはホストペアレンツが忙しく仕方のないことだった。教会でキリストの教えを説く学生用の小さな教室にブラザーと参加したりすることで補ったりしてみた。一学期の後半はポジティブを心がけたのが功を奏し、体育やドラマの授業での友達の輪が少しずつ広がっていった。休み時間にバスケをしたりゲームをしたりしたのが楽しかった。
2学期はクラスが大きく変わり、挑戦としてダンスクラスを取ったが、ほとんど女子ばかりで男子は2人と初っ端から体育とは違う意味でハードだったが、1学期の苦い経験を糧に、2学期は積極的にクラスメイトに話しかけて行くようにした。意外にも男子より女子の方が(なんとなく感覚的に)圧力を感じず話しやすかったためダンスクラスでは友達が増えた。2学期は他の授業もクラスのメンバーに恵まれてやりやすい環境だったので一層頑張ろうと意気込んでいたところでマーチブレイクに入り、コロナのパンデミックが話題となった。
後悔していること
それは、1学期の頃からもっと能動的にクラブ参加に動くべきだったという点。今考えれば同じ学校に通っている日本人留学生の子と一緒にカーリングクラブにでも参加しても良かったと思う。もっと広げられたはずの友達の輪をコロナによって打ち切られたことは悔しかったが、そこは受け入れて出来ることをやるしかないと切り替え、他の日本人留学生を励ましたり最後に現地の友達やファミリーとの残り少ない時間を過ごした。
終わってみれば少し悔いの残る8ヶ月の留学生活だった。しかし留学するためのプロセスや、留学プログラムを通して出会った人たちや経験は自分にとって大きなプラスになったと断言出来る。SNSに日本へ帰国すること、悔いは残るが良い留学生活を送ることができた感謝の気持ちを留学中の写真と一緒に投稿したところ、多くの日本人留学生、現地の友達から8ヶ月を労うコメントやまた戻ってきて欲しいというコメントが寄せられた。AjaxのファミリーにもNorth Bayのファミリーにも、また帰ってきて欲しいと言ってもらえた。この大切なご縁はずっと大切にしていきたいし、もう一回り二回りさらに成長して、いつかまたNorth BayとAjaxを訪れたい。
留学を通してお世話になった全ての人たちに心からの感謝を。
(写真・文/2019年度カナダ(夏出発)派遣生 T.F.)
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