連載でお伝えしている、EIL高校生交換留学プログラムにてフランスに滞在中のS.Sさんの留学体験談。
今回は、フランス生活6ヶ月目。バカンスも終わり、学校生活が再びスタート。フランスの文化にたくさん触れ、沖縄や日本のことも紹介する機会が多くあったそうで・・・
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今月で私がフランスへ来て6ヶ月が経ちました。今月はバカンスも終わり、学校へ通いました。また今月はフランスの文化も沢山触れることが出来、沖縄・日本のことも沢山紹介し、とても楽しかったです。
フランスでは今年からバカロレア改革があり、今月はバカロレアの模試や新しくなったバカロレアで、以前にはなかった新しいテストなどがあり、皆とても勉強に励んでいたので、私も頑張らねばと奮起付けられました。学校の授業にも慣れ、先生方ともフランス語でお話を出来るようになり、色々な方からフランス語上達したねと言って頂き、嬉しかったです。
以前のお話でスペシャリティのお話をしたので今回は必須科目の中のいくつかの授業についてお話します。フランスではフランス語、英語(第1外国語)、地理歴史、理科、体育、第二外国語(主にスペイン語か、ドイツ語)は必須科目で高校2年生のgeneral という一般クラスの生徒全員が受けます。
英語の授業では主に毎回リスニングをします。以前にも話したと思いますが、生徒は間違いを恐れず、発表したり話したりするので本当の語学力というのが身についているなと感じます。またテストでもスピーキングのテストがあり、日本は文法や単語を中心にしますが、バカロレアでもリスニングをしてレポートを書くそうで、アウトプットというのを重視していると感じました。
私は週に1回(2時間)体育の授業があります。私の体育の授業では学年全体で3つのグループに別れ、それぞれ体育をします。競技は一学期ごとに変わるのですが、私は一学期は陸上で長距離をし、二学期は卓球をしました。私のグループには女子生徒が5名程度、男子生徒が20名ほどいます。日本ではほとんどの場合、体育は男女別に行いますが、フランスでは男女混合が当たり前で、卓球の授業では男女混合で試合もします。また体育着のような物もなく、自分でスポーツ好きなようにスポーツ服を着て行います。私が体育の授業でとてもいいなと思ったのは、技術より努力を評価してくれることです。私は長距離が得意ではなく、最初長距離のグループになった時とても不安でした。しかし体育の授業ではもちろん長距離をしますが、その時に自分で自分の戦略というのを立て、それを行えたかどうかや、どれだけ練習に励んだかなどを見てくれます。先生や生徒はみんな優しく、私に丁寧に教えてくれます。また卓球ではラケットの持ち方で日本ではペンホルダーという持ち方があり、私はそれで卓球をしていたのですが、その持ち方はフランスでは知られていないようで、先生がその方法も教えて欲しいということで、体育の授業で皆で一緒にこのペンホルダーという持ち方をして楽しみました。体育の授業は週1ですが、皆本当に優しく体育が苦手でもとても楽しんで授業をしています。
今、地政学の授業で民主主義について学んでおり、授業の1つで、それぞれ国を選びその国の政治体制について紹介しました。その際に私は日本のことを教えて欲しいと言われ、日本の政治体制についてレポートをしました。私はフランスで日本の政治について伝えるのが1つのやりたいことでもあったのでこの機会に伝えることができ、とても楽しかったです。その際に『その国の元首』を書く欄がありました。日本には現在元首はいません。しかし他の国では元首はいるのは当たり前で、また日本は海外からは天皇が元首の扱いを受けています。そのためネットでフランス語で調べたりすると、元首は天皇と出てきたり、総理大臣と出てきたり、様々な情報が出てきます。しかしだからといって天皇や総理大臣が元首なわけではなく、それを説明するのがとても大変でしたが、理解してくれたのでよかったです。日本の政治について知らなかったことも沢山あり、やはり自分自身も日本について沢山学ぶことがあるなととても実感しました。私たちが国の情報をきちんと伝えなければ、誤ったことを伝えてしまうことになります。きちんと知識を持ち、説明することはとても大切であると実感しました。
学校は友達や先生がとても優しく、毎日楽しんで過ごしています。学校で過ごす時間も大切に沢山学んでいきたいです。
フランスでは1月6日は公現祭(Épiphanie)という、祝祭の日があります。多くのお家でこの日はガレット・デ・ロワ(galette des rois)というケーキを食べます。このケーキの中にはフェーブ(fève)といって小さな人形のようなものが入っており、自分のケーキの中にこの人形が入っている方が王冠を被り、rois ou reine (王様か女王様)になります。このガレット・デ・ロワを食べるのは公現祭の日だけというわけではなく、家族や友達と1月の間、何回も行われます。この日は元々宗教的なお祝いの日なのですが、近年ではたとえ自分が宗教を持っていなくても、多くの人が行い、ひとつの“文化”になっているそうです。私もホストマザーと一緒にガレット・デ・ロワを作り、家族で食べました。また他の日にはマザーがポケモンのフェーブが入っているガレット・デ・ロワを買ってきていて、フランスでも日本のアニメが多くの人に人気であることを知り、嬉しくなりました。
また2月2日は聖燭祭という、聖母マリアのお清めの日が、クリスマスの40日後にあります。この日も公現祭と似ていて、フランスではこの日にクレープを食べます。クレープを食べる理由としてはクレープの丸い円とその色が太陽を意味することや、冬の種まきが始まるこの時期に、これからの繁栄を願い、余った小麦粉でクレープを作った、などクレープを食べる理由は諸説あるそうです。この日は多くの家庭でクレープが食べられ、私もホストファミリーと一緒にクレープを作りました。その際に、沖縄から送って貰っていた『ちんびん』(沖縄の伝統的なお菓子で黒糖が入っているクレープのようなものです)を作りました!ホストファミリーもちんびんを美味しいと気に入ってくれ、とても嬉しかったです。聖燭祭について色々歴史を一緒に調べたり、ちんびんや黒糖について説明をしたりなど、フランスの文化を経験しながら沖縄についても伝えられてとても楽しかったです。
この聖燭祭の際、私はホストファミリーの知り合いの方のお家でもクレープを作って楽しみました。フランスの北西部にはブロターニュといって、独特の文化や言語があり、とても沖縄に似ている地域があります。その地域ではガレットと呼ばれるそば粉を使ったクレープ料理があります。ガレットは卵とチーズ、ハムを乗せて食べたり、デザートととしてクレープと同じように食べることもできます。ホストファミリーの知り合いの方はブロターニュ出身で、手作りのガレット作りを一緒に体験させてもらいました。生地を丸く焼くのはとても難しかったですが、一緒に作りとても楽しむことが出来ました。またこの方がブロターニュ伝統の衣装を持っていて、試着をさせてもらいました!中々できない体験をさせて頂きとても感謝しています。ブロターニュ地方はとても文化を大切にしていて、沖縄も同じように文化をこれからも伝えていきたいと思いました。
フランスでは冬によく食べる料理にラクレットというものがあります。日本で聞くと、チーズの切り口を温めそれを野菜や肉などに載せるものが有名かと思いますが、フランスでは家庭用にラクレット用のラクレットグリルがあり、多くの家庭で冬はラクレットをします。ラクレットは冬の寒い地域で、チーズとじゃがいもと一緒に保存食として食べられていたそうです。また同じく有名なフォンデュがあります。フォンデュも同じようにチーズフォンデュが有名ですが、鍋に油を入れ、そこに肉などを揚げて食べるオイルフォンデュ(fondue bourguignonne)というものもあります。冬の寒い時期を過ごすために“食”というとのはフランスでとても大切な存在であり、ご飯の際は家族と過ごす大切な時間であるということを日々実感しています。 今月、ホストブラザーの誕生日があり皆でお祝いをしたのですが、その際に『代父母』というキリスト教の伝統を知りました。子供が生まれた際、洗礼式という儀式を教会で行い、その洗礼式に立ち会い、証人のような役割をするのがこの代父母という方々だそうです。主に親族から1人、友人などから1人だそうですが、親族から2人ということもあるそうです。この代父母の方々はただ洗礼式に立ち会うだけではなく、その後の人生において子供を見守るという役割があり、誕生日やお祝い事があると、この代父母という方々を招待したり、プレゼントをあげたりなど、大きな役割を担っているそうです。 今月は家族と一緒にお出かけでクリソンという街へ行き、クリソン城というお城で歴史を学んだり、白ワイン畑などを見ました。のどかな街ですが、とても歴史的で綺麗でした。またナントの街の美術館にマザーと一緒に行き、様々な作品を見ました。私は歴史に興味があるので、とても楽しかったです。今月はフランスの文化を沢山感じ、また日本の文化も沢山お話したりしました。 先日、私がとても面白いなと思ったことがありました。
ホストマザーがお友達からクリスマスプレゼントとして日本料理の本を貰ったそうで、それを見てお話をしていました。その本の中に沖縄の料理の紹介があり、そこに『ゴーヤ』が載っていました。ゴーヤの説明で『Amer 苦い』という表現が使われており、私もそれを使って説明しました。すると、ファミリーに野菜で苦いという感覚があまり分からないと言われました。ゴーヤは、美味しいと感じるかはどうかは人それぞれですが、味で言うとほとんどの方が『苦い』になると思います。日本では苦い食べ物は健康に良い、栄養があるなどとよく言われます。ゴーヤもそのうちで、沖縄ではよく食べられています。フランスでも苦い食物はあると思いますが、苦い=毒の味 というイメージがあり、あまり食べられて来なかったそうです。そのため、苦い食べ物という感覚が難しいそうです。そこで日本からゴーヤのチップスを送ってもらいこれが苦いだよと紹介しました。食べたことの無い不思議な味だと驚いていました。によって、また人によって味覚は様々で、私もフランスへ来て、チーズなど今までに味わったことの無い味を毎日発見しています。ファミリーは知らない味や料理を発見するのが楽しいと言ってくれ、私も様々な料理を作ったり、食べたりするのがとても好きです。今月では私はホストファミリーとすき焼き、ラーメン、ワカメときゅうりのおひたし、ちんびん、抹茶ケーキなどを作ったり、またカルボナーラにほうれん草などを入れ、日本風にしたり、ボロネーゼをラーメンの麺で食べてみたりなど、和洋折衷をして楽しみました。
またファミリーが面白いと感じたことがあり、私も興味深いととても思ったことがありました。日本ではよくその土地の特産物や料理などをお菓子にしたりします。紅芋のお菓子であったり、抹茶のお菓子、たこ焼き味など、様々なお菓子があります。フランスは野菜や料理でお菓子を作ることはほとんどなく、紅芋などの野菜でお菓子を作ることがとても興味深かったそうです。私たちにとってはよくあることで、私は疑問に思ったことはありませんでしたが、野菜という元々甘みがあまりないものを、料理をどうしてお菓子にするのか、と疑問に思うそうです。食べ物に対する考え方はそれぞれで、皆それぞれ自分達の食を様々な形で表現していて、とても興味深いと思いました。私のファミリーは野菜でお菓子を作ることを気に入ってくれ、フランスでビテロットvitelottes という紅芋に似た紫じゃがいものような野菜があり、それを使って一緒にケーキを作りました。それぞれの食に対する捉え方や、感じ方などそれぞれで違って、それぞれ素晴らしく、とても興味深いなと思いました。 『食べ物』というものはその国の文化を代表するものであり、私たちが生きてきた歴史を物語っています。フランスでは食はとても重要視されており、私が好きなフランス語の中に Bon appétit (ボナペティ)という言葉があります。日本のいただきますとは少し違い、食卓でご飯を食べる際に、自分から相手に対して、召し上がれ、美味しく食べてね。のような意味合いです。また食卓ではなくてもお昼頃に会い、ひとつの別れの挨拶としても使われます。食のフランスという言葉をとても表すような表現です。フランスは食事にかける時間が1番長い国だと言われています。以前にも紹介したようにアペリティフで会話を楽しんだり、食事は食べるだけではなく、家族とのコミュニケーションの場としてとても大切な時間です。またフランスでは上記で紹介したように行事ごとに様々な食べ物を食べます。フランスでの食文化について触れながら、日々日本の食も紹介し、お互いにお互いのことを沢山学んでいます。食というのは1つのコミュニケーションツールでもあるなと留学をしていて感じました。私は食べることが大好きで、最初の頃フランス語があまり喋れなかった際に、料理を食べ、とても美味しいとファミリーといつも話していました。フランス語が話せなくても食事を通して繋がることが出来、ホストファミリーも私が食事を楽しんでくれ、とても嬉しいと言ってくれました。また一緒に料理を作ったりすることで、文化を共有したりしています。留学は言語や情勢など学ぶことも沢山ありますが、料理や文化を『感じる』ことも沢山あり、今までに出会ったことの無いことと出会うことはとても素晴らしく、自分の視野を広げてくれるものであるなと思いました。私もホストファミリーや友達など出会った方々に沖縄、日本のことを沢山伝えています。日本に居なくても日本を感じられるように私自身も自分の土地についてしっかり学び、これからも多くの方に伝えていきたいです。 6ヶ月という時間が経ち、新しいことと出会う毎日です。時間が経つのが早く、まだやりたいことも沢山あるので、時間を大切に、出会いを大切に残りの時間を悔いなく過ごしていきたいです。
(写真、文:2019年度フランス派遣生 S.Sさん)
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